刑事弁護人が被告人に有利な事情(情状)をどのように考えるか

刑事弁護人の使命は?

刑事弁護人は、被告人(罪を犯したとして刑事裁判にかけられている人)の人権を擁護する立場にあります。
仮に犯罪をしたことに間違いなくても、適正な範囲での処罰にとどめるために、弁護人は、被告人にとって有利な事実を調査、主張します。
犯罪被害者の方や、罪を犯したことのない一般の方にはなかなか理解されにくいところです。
しかし、刑事弁護は弁護士にのみ認められているため、弁護士にとって重要な職責の一つです。

 

今回は、刑事弁護人がどのような視点から、被告人にとって有利な事情を考えて、調査し、主張するかについて解説します。
特に、被告人になってしまった方や、そのご家族に知っておいていただきたく思います。
それ以外の方でも、裁判員に選ばれた場合に備えて、知っておくべき事だと思います。

 

量刑(刑罰の重さ)はどうやって決まる?

犯罪をしたことに争いがない場合、「どのような刑罰を下すべきか」という量刑の問題があります。
基本的には、量刑は、やってしまったことの結果の重さや行為の悪質さ、動機などの事情(犯情)によって、過去の裁判例と照らしておおまかな刑罰の幅が決まります。
したがって、これらの事情はすでに起きてしまった過去のことなので、今からどうすることもできません。
しかし、その刑罰の幅の中で、できる限り軽い刑罰にとどめるために、弁護人は以下の事情がないかどうかを検討します。

 

 

1 犯罪の動機

→動機の悪質性(反社会性、私利私欲、情欲性、無目的性など)
これらの事情が「ない」ということも有利な情状になりえます。

 

2 方法、態様及び計画性

→犯罪の方法や態様、計画性、(残忍性、執拗性、危険性、巧妙性、類似性、反復性、模倣性)
これらの事情がないということも有利な情状になりえます。

 

3 犯罪結果の大小、程度、数量

→結果が重大ではないということも有利な情状になりえます。
また、被害回復という意味では、被害弁償をすることが重要です。

 

4 被告人の性格

→反社会性、常習性、犯罪傾向性、粗暴性、精神的未熟性。
これらの事情がないということも有利な情状になりえます。

 

5 被告人の身上

→年齢が若いと可塑性(元に戻る)があるとして有利な情状になりえます。
逆に、高齢→老齢者保護という特別予防から有利な情状になりえます。)
職業、社会的地位と言うのも 、社会に貢献→善良な性格の表れ)、経済状態(貧困)、労働の習慣(再犯のおそれなし)

 

6 前科・前歴

→同種前科があれば、再犯してはいけないという警告をすでに受けているので責任(犯情)が重いとされます。
ただし長期間前科がなければ現在に結びつかない限り考慮すべきではないとも言えます。

 

7 余罪

→実質上これを処罰する趣旨での量刑資料とすることはできません。
前科と違い確定判決はなく警告を受けていないからです。
ただし被告人の性格、経歴及び 犯罪の動機、目的、方法などの情状を推知するための資料として考慮することは許されています。

 

8 反省

反省したからといって、罪が無かったことにはなりません。
しかし反省していない場合と比べると、非難可能性がそれだけ弱まるので、有利な情状になりえます。
そのため、謝罪文の作成や被害者への送付、被害弁償の試みが大事になります。

 

 

最後に

 

以上が、刑事弁護人が、被告人が適正な範囲内の刑罰に収まるように、被告人にとって有利な事情(情状)を考える要素です。
被害者との示談交渉(被害弁償)だけでなく、被告人にとってどのような有利な事情があるか、それを裁判所にわかってもらうためにはどのような証拠を提出すべきかという点が、量刑を決める上で重要です。
国選弁護は弁護士費用が無料になることがほとんどですが、弁護士を選ぶことはできません。
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執筆者: 鹿児島あおぞら法律事務所 
代表弁護士 犬童正樹

 

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