不同意わいせつ事件で注意すべき点とは?

不同意わいせつ罪はどんな罪?


不同意わいせつとは、被害者の同意がないのに、わいせつな行為を行うことです。
強制わいせつ罪や強制性交罪から刑法が改正され、暴行や脅迫などの「強制」ではない場合にも処罰される点で、処罰範囲が広くなりました。

 

「わいせつ」な行為とは、最高裁判例によれば「性欲を刺激、興奮又は満足させ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」です。
例えば、同意がないのに相手の体を触る、抱きつく、キスをする等の行為です。
「セクハラ」という言葉もありますが、正式には「わいせつ行為」といいます。

 

不同意わいせつ罪に該当する行為をすると、加害者は刑事事件で処罰されます。
また、被害者は、加害者に対して、民事で慰謝料請求できます。
刑事と民事は別々の手続きですが、民事で慰謝料を支払って被害弁償ができれば、刑事処分が軽くなるという関係にあります。

 

以前は、強制わいせつ罪として処罰されていましたが、刑法改正によって、不同意わいせつ罪として処罰されます。

 

つまり、以前の強制わいせつ罪は、
13歳以上の者に対しては「暴行又は脅迫」を用いて被害者を抑圧してわいせつな行為や性交を行った場合を処罰の対象としていました(なお、13歳未満に対しては暴行脅迫がなくとも強制わいせつ罪が成立します)。

 

もっとも、「暴行又は脅迫」という強制がなくても、性的行為に同意していない場合のわいせつ行為は、被害者の性的自由を害するものです。
にもかかわらず、これまでの強制わいせつ罪では、「暴行または脅迫がない」ことを理由で、処罰すべき悪質なケースを処罰できない場合がありました。
そこで、暴行または脅迫がない場合でも、一定の条件で処罰できるようにするために、「不同意わいせつ罪」が新設されました。

 

また、「不同意性交等罪」も新設されました。
つまり、以前の強制性交罪(いわゆる強姦罪)が改正され、相手の同意なく、「性交等」(通常の性交以外にも、口腔性交、肛門性交、膣や肛門に指や物を挿入する行為)を行った場合には、不同意性交等罪が成立します。
不同意わいせつ罪とは、性的行為の内容が違うだけで、「不同意」の内容については同じです。

 

不同意わいせつ罪はどんな場合に成立する?


不同意わいせつ罪は、以下の3つの状況でわいせつ行為を行なった場合に成立します。

 

状況@

@次の一から八のいずれかを原因として、同意しない意思を形成・表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせたり、又はその状態にあることに乗じること

 

被害者に性行為の同意がなかったとしても、加害者が「被害者は同意している」と思っていれば、犯罪の故意がないので処罰されません。
例えば、被害者が本当は同意していなかったのに、はっきりと拒否・抵抗しなかった場合、これまでの強制わいせつ罪では故意が立証できないという理由で処罰が困難でした。

 

ただ、被害者が拒否できないような状況を加害者が作り出している場合や、被害者が拒否できない状況を利用してわいせつ行為をした場合には、被害者の性的自由を害するので処罰すべきだというのが、一般的な国民感情だと思います。

 

そこで、下記の状況で、わいせつ行為を拒否する意思を形成、表明することが困難な状態を加害者が作り出したり、そのような状態を利用して、同意なくわいせつ行為をすれば、不同意わいせつ罪が成立することになりました。

 

一 暴行又は脅迫を加えること
→以前の強制わいせつ罪と同様です。
二 心身の障害に乗じること
→被害者が身体的または知的障害がある、病気である等の事情で抵抗できないことを利用する場合です。
三 アルコール又は薬物を与え、抵抗などできない状態にすること
→飲酒や睡眠薬などで抵抗できない状態にした場合です。やや曖昧な表現に感じます。
四 睡眠その他の原因により意識がはっきりしない状態にあることを利用すること
→睡眠中や、麻酔などで朦朧としている状態を利用した場合です。
五 同意しない意思を形成したり表明したりする時間を与えないこと
→相手が応じる間もなくいきなり体を触るなどした場合です。
六 予想外の事態に直面したことによる恐怖・驚きにより体が硬直するなどして抵抗できない状態を利用すること
→曖昧な表現のようにも思えますが、この場合も不同意わいせつ罪は成立します。
七 過去の虐待が原因で感じた無力感や恐怖心によって抵抗できない状態にすること
→過去にどのような虐待行為があったかも争点になるでしょう。
八 経済的・社会的地位に基づく影響力により不利益が生じることへの不安から抵抗できない状態にすること
→例えば、会社における上下関係や取引関係がある場合です。
いわゆるセクハラの代表例です。

 

では、「同意しない意思を形成・表明・全うするのが困難」とはどんな意味でしょう?

 

そもそも、性的行為に対する同意は、@心の中でまず形成し、Aそれが外部に表明されます。
したがって、形成ができない場合、外部に表明もできない状況であれば、同意があったとは言えません。
また、かりに同意が形成されて、外部に表明できたとしても、B実際に抵抗できない状況であれば、これもまた同意があったとは言えません。

 

例えば、@は、アルコールなどで意識もうろうの場合、
Aは、いきなりの行為や上下関係がある場合、
Bは、暴行または脅迫がある場合
などを想定しています。

 

状況A

A性的な行為ではないと誤信させたり、人違いをさせること、又は相手がそのような誤信をしていることに乗じること
例えば、治療の一環であるとか、おまじないであるとか、性的意味合いがないと誤信させる場合です。

 

状況B

B16歳未満の子どもに対してわいせつ行為を行うこと
以前の強制わいせつ罪では、13歳未満の子どもにわいせつな行為を行った場合、暴行または脅迫がなくても、また、同意があっても、犯罪が成立していました。
他方で、13歳以上の場合は同意があれば少なくとも強制わいせつ罪とはなりませんでした。

 

不同意わいせつ罪の新設に伴い、13歳以上16歳未満の子どもに対し、5歳以上年長の者がわいせつ行為を行なった場合は、同意があっても不同意わいせつ罪が成立することになりました。
不同意わいせつ罪は、以上の3つの状況で、わいせつ行為を行なった場合に成立します。

 

不同意わいせつ罪を犯してしまったら


不同意わいせつ罪の法定刑は、6月以上10年以下の拘禁刑です。
(懲役刑や禁固刑は「拘禁刑」という名称になりました。)
つまり、罰金刑がないため略式手続はなく、?起訴されて正式裁判になるか、?不起訴になるかという2択になるということです。

 

不同意わいせつ罪は、「被害者の供述が信用できる」と捜査機関が判断すれば、逮捕・勾留される危険が高い事件類型です。
また、行為の悪質さにもよりますが、初犯であっても起訴されて正式裁判になる可能性は十分にあります。
さらに執行猶予がつかずに実刑になることも考えられます。

 

そこで、不同意わいせつ罪を犯してしまったら、できるだけ早く、刑事弁護に強い弁護士に相談、依頼すべきでしょう。
被害者がいる犯罪なので、示談(被害弁償)ができるかどうかが刑事処分に大きく影響します。
そして、通常、被害者は加害者と直接連絡を取ることはしない(連絡先すら教えない)ので、弁護士が代理人として示談交渉するしかないからです。
被害者と示談できれば、不起訴になる可能性が飛躍的に高まります。

 

不同意わいせつ罪の被害を受けた方へ


他方で、不同意わいせつ罪の被害者となってしまった方は、大変な精神的苦痛を負ったことでしょう。
そこで、加害者に対して慰謝料を請求することができます。

 

被害者の方が加害者と直接交渉することは、心情的にも物理的にも難しいところです。
また、弁護士を代理人として慰謝料請求した方が、回収できる金額は高くなり、早期に解決できる可能性も高まります。
慰謝料請求だけでなく刑事事件にも精通している弁護士の方が、状況を把握でき、慰謝料請求において有利な交渉ができます。

 

不同意わいせつ罪の相談は鹿児島あおぞら法律事務所へ

以上が、不同意わいせつ罪、不同意性交等罪の解説でした。
被害者の方も、加害者の方も、弁護士をつけた方が圧倒的に有利になります。

 

鹿児島あおぞら法律事務所では、刑事事件に関して、被害者側、弁護側のいずれも多く経験しており、費用についても一定の分割払いに応じています。
まずは相談だけでもお気軽にお越しください。相談無料で、電話相談も可能です。
プライバシーに配慮し、完全予約制、個室による相談です。
今すぐ、お気軽に、お問い合わせください!

 

執筆者: 鹿児島あおぞら法律事務所 
代表弁護士 犬童正樹

 

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参考:不同意わいせつ罪の条文


第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、もしくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。